労働者が勤務中に怪我を負ったり、通勤中に交通事故に遭うなどした場合、通常は労災保険が適用されるので、労働者は治療費や薬代などの医療費を支払う必要はありません。またこの労災保険料は、雇い主に負担義務があるので、労働者は負担する必要はありません。
それではここでいう「労働者」にアルバイト、パートは含まれるのでしょうか?
この場合の労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」をいいます。したがって正社員のみならず、アルバイトやパートも含まれることになります。また国籍を問われることもないので、外国人も労災保険の対象になります。労働期間に関する制限もないので、日雇い労働者や、アルバイト初日であったとしても、保険の給付を受けることができます。
労災が発生すると労働保険料が上がるため、雇い主によっては、「アルバイトには労災は適用されない」「1年以上働かなければ申請できない」などと言い、申請を諦めさせようとすることがあります。しかしそれに惑わされずに、労災保険の申請をしましょう。労働中、あるいは通勤中に負った怪我などについて、健康保険で治療を受けることは、むしろ違法になってしまいます。
申請する方法については、正社員と同じで、労災指定病院で治療を受ける場合には、病院に労災であることを伝えれば、病院の方から労働基準監督署に医療費が請求されることになります。また指定以外の病院で受診をする場合には、自分で監督署に行けば、申請書をもらうことができるので、それに記入して手続きをすることになります。
もし雇い主が労災保険の申請に協力的ではない場合には、監督署で、会社が申請拒否をしているけれども労災申請をしたい旨を伝えた上で、手続きを進めてください。作成した書類を病院に提出する時にも、監督署の指導を受けたことを伝えれば、受け付けてもらえます。
既に健康保険で治療を始めてしまった場合には、速やかに病院に労災であることを伝えましょう。労災指定病院の場合は、申請手続きにより、労災保険に切り替えられ、既に支払った分の治療費の払い戻しを受けることができます。ただし、治療開始日から日が経ちすぎている場合には、労災への切り替えができないこともあるので、注意が必要です。なるべくならば、治療を始めたその月のうちに、労災であることを病院に伝えましょう。
なお労災保険は、アルバイトやパートを辞めた後であっても、申請することができます。また辞めた後も治療が続いている場合にも、保険は適用されます。
アルバイトやパートにも、労災保険を受ける権利があります。雇い主が大企業であっても、個人事業主であっても、その点に変わりはありませんし、仮に雇い主が労災保険に加入していなかったとしても、労働者には保険を受給する権利があります。アルバイト中、あるいはパート中に怪我を負うなどした場合には、遠慮することなく、申請しましょう。